電車に乗る時。病院の待ち時間が長そうな時。。
サッと本棚から取り出して、バッグの中に入れる文庫本。
その回数が圧倒的に多いのが、向田邦子さんのエッセイです。
たまたま見た再放送の「阿修羅のごとく」という
NHKのドラマの内容の深さに
思わず原作を読んでみたいと思ったのが始まりでした。
でもその時にはもうこの世にいない方だと知り、、
それからは手当たり次第、小説もエッセイもシナリオも、
さらには家族や作家仲間が書いた向田邦子像、いろんな特集、、
はては料理本まで手に入れて、片っ端から読みあさりました。
一人の作家の作品を完全読破したのは向田さん一人です。
「昭和」という単語ひとつで括っては申し訳ないけれど、
向田さんの書くものには、まぎれもない「昭和」が息づいています。
特にエッセイの面白さ!
「父の詫び状」は読み過ぎてボロボロになって、今のは2冊目。
何回、いや何十回読んでも飽きない面白さがあります。
でも一番好きな一編をあげるとしたら、、
「夜中の薔薇」の中の「手袋を探す」という一編です。
若い頃の向田さんの
「これから先自分はどうやって生きて行くべきか、、」
その事に悩み苦しんだ時間が、この一編に凝縮されています。
誰もが辿ったであろう道を、こんな風に鮮やかに描き出せる人は
そんなにいないのではないかと、
読み終わった後、身体が震えるほど感動したものでした。
今でも時々読み返しています。
その度に、想いを新たにしています。
向田邦子さんという作家と出逢えて良かった。
心からそう思います。
ただ、淋しいことは、もう決してこれ以上作品が増えない事。
それがとても残念です。